冬はつとめて

お題「ゆっくり見たい映画」

冬には特に映画が見たくなる。

おくりびと」や、「マイ・インターン」、「レミーのおいしいレストラン」、「ハウルの城」、「ホームアローン」。

夏にも夏にこそ見たくなる映画はあるのだが、冬に見たくなる映画には共通項があることを最近見つけた。

どれだけ魅力的な家(もしくは部屋)があるか、だ。

言わずもがな、「おくりびと」に出てくる社長室は、自分が家を建てたら欲しい部屋トップ3だ。

あの緑に囲まれた部屋で出てくるふぐの白子焼きは、少しばかり白すぎて緑に囲まれた部屋では異色を放っている。

もどかしいくらいにふっくらとしていて、口の中に入れたいという思いと、火傷をしたくないという葛藤の狭間で多くの人間がやれるだろう。

緑に囲まれた中で火を扱うという光景も(しかも密室である)奇妙ながらに細部まで美しく、ガジェット類などない中で食べ物だけに集中することができる。

おくりびとに憧れて緑の世話を始めたが、少し葉っぱが落ちただけで慌てているようではきっとまだまだなのだろう。

初心者にも優しいと謳われるガジュマルは、育つ気配がない。枯れていないだけまだありがたいのだろうか。私もその内に、部屋の中を緑一色にしたい。

マイ・インターン」に出てくる一軒家は一見して温かい家族が住む素敵な家だ。

しかし、中ではごたつきが絶えない。

ただ部屋のレイアウトなどIKEAのようなワクワク感があり、住んでみたらきっとほっとするようなそんな家だ。

ベンがジュールズのために用意した、暖かいスープはきっとスープストック○キョウなどで買えるような簡単な筒に入っていて、簡易だがきっとお腹だけでなく心から温まることのできるスープである。

レミーのおいしいレストラン」で出てくるシェフ見習いが済むパリのアパートは、夜景が大層美しく、物語全体の風景が美しい。

そして、食べなくてもこのレストランで出る料理は全て美味しいだろうと確信できる。何と言っても色とりどりの野菜を使ったラタトゥイユ

ラタトゥイユという響きで、何が入っているのかがすぐにパッと浮かぶ。

鮮やかなナス、緑豊かなズッキーニ、パプリカ、本来は夏野菜の栄養を見事に凝縮した物だが、冬の暖かい部屋で食べられるのも今の農家化学進歩のおかげである。

ハウルの城」に出てくるソフィーが帽子を作っている作業部屋は自分の作業部屋にしたいくらい素敵だ。

ソフィーが無理矢理作った朝ごはん(私も毎朝うましかて!と叫びながら朝ごはんを食べたい)は、黄身も白身も艶々としていて、乱雑なテーブルの上をどかしてたべる厚切りベーコンは想像するだけでとろける。

こうしてかいてみて分かったことだが、

冬に見る映画の素晴らしさは、部屋もそうだが食べ物の方に重きを置いていることに自分で気が付いた。

なるほど部屋は取ってつけたような形になってしまったので、食に関する重きが大きいのだろう。

細やかなしあわせ

お題「ささやかな幸せ」

ささやかな幸せと言われると、ふと小さい時のことを思い出す。

お菓子なんて洒落たものは女手一つで育ててくれた母の想像にはなかったらしく、毎度友人の家で出してもらったチョコレートのお菓子を食べ尽くしてしまうような子どもだった。

そんな子ども時代に好きで、唯一家で食べられた甘いものが『砂糖をかけた白米』だった。

今思えば、とんでもない子どもである。

もちろんこのことは誰にも内緒だったので、家へ帰ってきて母がいないことを確認し、バレないようにこっそりお茶碗にお米を盛り、その上に砂糖をかける。

全部が真っ白で、大層美しかったのを覚えている。

子供時代の反動だろうか、今でも甘いものが大好物で、朝ごはんを抜くと低血糖という状態になってしまう(調べてみると半分糖尿病のようなものだそうだ)

大人になってから、たまに食べたくなるが怖くて試すことは未だに出来ない。

あの真っ白で美しい山を切り崩すには、少し歳を取りすぎたのかもしれないし、少しだけ世の中の美味しいものを食べたことで舌が肥えてしまったような気もする。

いつかあの味や食感を少しだけ確かめてみたいとは思っている。

だが、想像するだけで、ほんの少しだけ、きめ細やかな幸せを感じるのだ。