細やかなしあわせ
ささやかな幸せと言われると、ふと小さい時のことを思い出す。
お菓子なんて洒落たものは女手一つで育ててくれた母の想像にはなかったらしく、毎度友人の家で出してもらったチョコレートのお菓子を食べ尽くしてしまうような子どもだった。
そんな子ども時代に好きで、唯一家で食べられた甘いものが『砂糖をかけた白米』だった。
今思えば、とんでもない子どもである。
もちろんこのことは誰にも内緒だったので、家へ帰ってきて母がいないことを確認し、バレないようにこっそりお茶碗にお米を盛り、その上に砂糖をかける。
全部が真っ白で、大層美しかったのを覚えている。
子供時代の反動だろうか、今でも甘いものが大好物で、朝ごはんを抜くと低血糖という状態になってしまう(調べてみると半分糖尿病のようなものだそうだ)
大人になってから、たまに食べたくなるが怖くて試すことは未だに出来ない。
あの真っ白で美しい山を切り崩すには、少し歳を取りすぎたのかもしれないし、少しだけ世の中の美味しいものを食べたことで舌が肥えてしまったような気もする。
いつかあの味や食感を少しだけ確かめてみたいとは思っている。
だが、想像するだけで、ほんの少しだけ、きめ細やかな幸せを感じるのだ。